職人を採用する方法|未経験者を採って育てる会社の5つの共通点
執筆・監修:中井 英喜(建設業専門の採用コンサルタント)

「職人の求人を出しても、経験者からの応募がまったく来ない」「未経験者を採ってみたけれど、半年もたたずに辞めてしまった」。職人の採用について、こうした悩みを抱えている建設業の経営者・採用担当者の方はとても多いです。この記事では、現場職人から建設業専門の採用コンサルタントになった私、中井が、職人を採用する方法を「未経験者を採って育てる」という視点からお伝えします。この記事で分かることは次の3つです。
- 職人の採用で、経験者だけを狙うと苦しくなる理由
- 未経験者を採って一人前に育てている会社の5つの共通点
- 今日から始められる、未経験者採用の準備の手順
職人の採用は「経験者を探す」より「未経験者を採って育てる」仕組みづくりが近道です
腕のいい経験者の職人は、今いる会社で頼りにされていることがほとんどです。親方や仲間との関係もあり、自分から求人サイトで次の職場を探す人は多くありません。そのため、「経験者のみ募集」の求人を出して待っていても、応募はなかなか集まりません。
一方で、私が多くの建設会社の採用を見てきて感じるのは、職人の採用がうまくいっている会社ほど、未経験者を採って育てることを前提に、採用と育成をひとつの仕組みにしているということです。
ただし、未経験者を採れば何とかなる、という話ではありません。育てる準備がないまま採用すると、早期離職につながり、現場の負担だけが増えてしまいます。大切なのは、次の2つをセットで考えることです。
- どんな未経験者に来てほしいのかを決め、その人に届く求人を出すこと
- 入社してから一人前になるまでの道のりを、会社として用意しておくこと
次の章では、未経験者を採って育てている会社に共通するポイントを5つに分けて説明します。
未経験者を採って育てる会社の5つの共通点
ここで紹介する5つは、特別なお金をかけなくても始められることばかりです。自社に当てはまるかどうか、確認しながら読んでみてください。
共通点1:「どんな未経験者に来てほしいか」がはっきりしている
「未経験歓迎」とだけ書いた求人では、誰に向けた求人なのかが伝わりません。育っている会社は、採りたい人の姿を具体的に決めています。
| 採りたい人の例 | 求人で伝えたいこと |
|---|---|
| 20代で、手に職をつけたい人 | 何年でどんな仕事を任されるか、資格を取る支援があるか |
| 他業種(製造・物流・飲食など)からの転職者 | 前の仕事の経験がどう活きるか、体力面の不安への答え |
| 家族がいて、安定を求める30代 | 給与の上がり方、休みの取り方、雨の日の扱い |
採りたい人が決まると、求人票に書くことも、面接で聞くことも自然と決まります。逆にここが曖昧だと、応募は来ても「思っていた仕事と違った」というミスマッチが起きやすくなります。
共通点2:一人前になるまでの道のりを「見える形」にしている
未経験者がいちばん不安に感じるのは、「自分は本当にできるようになるのか」という点です。私自身、現場に入ったばかりの頃は、何をどこまで覚えればいいのか分からず、先輩の背中を見て必死についていくしかありませんでした。
育っている会社は、この不安を減らすために、成長の道のりを簡単な表にしています。たとえば次のようなものです。
- 入社〜3ヶ月:道具と材料の名前を覚える、現場の段取りと安全のルールを身につける
- 3ヶ月〜1年:先輩について、決まった作業を一人でできるようになる
- 1〜3年:小さな現場や一部の工程を任される、必要な資格に挑戦する
立派な資料である必要はありません。A4一枚でも、「この会社なら一人前になれそうだ」と思ってもらえるかどうかが大きく変わります。求人票や面接でも、この表をそのまま見せると効果的です。
共通点3:教える人と教え方を決めている
「現場で見て覚えろ」という育て方は、今の若い人にはなかなか通じません。教わる側は何を見ればいいのか分からず、教える側も忙しくて声をかけられない。その結果、新人が現場で孤立してしまうことがよくあります。
育っている会社では、次のような工夫をしています。
- 新人ごとに「教える担当の先輩」を一人決めておく
- その日の作業の前に、今日やること・気をつけることを一言伝える
- 作業のあとに、できたこと・次に覚えることを短く振り返る
教える担当の先輩には、会社として「教えることも大事な仕事だ」と伝え、評価にも入れておくと、教える側の負担感も軽くなります。
共通点4:入社後3ヶ月のフォローを手厚くしている
未経験者が辞めてしまうのは、入社して間もない時期に集中しがちです。体力的なきつさ、人間関係、思っていた仕事とのギャップなど、小さな不安が積み重なって「もう無理だ」となってしまいます。
育っている会社は、入社後しばらくの間、社長や担当者が定期的に新人と話す時間をつくっています。1回10分程度でも、「困っていることはないか」「体はきつくないか」と聞いてもらえるだけで、新人の安心感はまったく違います。定着の考え方については、採用しても定着しない会社向けのガイドでも詳しく紹介しています。
共通点5:給与や待遇の「これから」を説明できる
未経験から入る人は、最初の給与が経験者より低くなることが多いです。それ自体は仕方のないことですが、「この先どう上がっていくのか」が見えないと、将来に不安を感じて離れていきます。
育っている会社は、「この作業ができるようになったら」「この資格を取ったら」給与や手当がどう変わるのかを、できる範囲で説明できるようにしています。資格取得の費用を会社が負担する、取得したら手当を付けるといった仕組みも、未経験者にとって分かりやすい安心材料になります。なお、従業員の教育訓練に使える国の助成金・支援制度もありますが、対象や金額は年度によって変わるため、利用する場合は必ず最新の情報を確認してください【要確認】。
今日からできる、未経験者を採用するための準備の手順
ここまでの内容を、実際に手を動かす順番にまとめます。一度にすべてやる必要はありません。上から順に、できるところから始めてみてください。
- 採りたい未経験者の姿を一人決める(年代、前の仕事、なぜ職人を目指すのか)
- 入社から3年までの成長の道のりを、A4一枚の表に書き出す
- 新人を教える担当の先輩を決め、教え方のルールを共有する
- 入社後3ヶ月の面談の予定を、あらかじめカレンダーに入れておく
- 資格・技能と給与の関係を整理し、説明できるようにする
- 1〜5の内容を、求人票と面接の説明に反映する
特に6番目が大切です。せっかく育てる仕組みがあっても、求人票に「未経験歓迎・やる気のある方」としか書いていなければ、求職者には伝わりません。成長の道のりや教える体制を具体的に書くだけで、「ここなら挑戦できそうだ」と感じてもらいやすくなります。
また、職人の採用では、求人媒体に頼るだけでなく、社員の知り合いを紹介してもらう方法や、地元の学校・職業訓練校とのつながりをつくる方法も有効です。どの手段を組み合わせるかは会社の規模や地域によって変わりますので、迷ったときはトルトル屋の支援内容もあわせてご覧ください。
まとめ:職人の採用は「採る」と「育てる」をひとつの仕組みにする
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 経験者の職人は自分から求人を探していないことが多く、「経験者のみ」の募集は苦しくなりやすい
- 未経験者を採って育てている会社は、採りたい人・成長の道のり・教え方・入社後のフォロー・待遇の見通しの5つを用意している
- 準備した内容を求人票と面接で具体的に伝えることで、応募と定着の両方につながる
職人の採用は、求人を出して終わりではなく、入社してから一人前になるまでを含めて考えることで、ぐっと安定します。トルトル屋では、これまで累計200社以上の建設業の採用を支援してきました(当社支援実績より・2026年10月時点)。「何から手を付ければいいか分からない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。